Comparison of vaginal examination methods to evaluate urovagina and purulent vaginal discharge in periestrous dairy cows.
Ishiyama D, Magata F, Matsuda F.
J Reprod Dev (2025) 71(1):17-23.
ホルスタイン種の乳牛227頭を対象に、発情期の尿腟および膿性腟分泌物(PVD)の診断方法を比較しました。3種類の腟検査法(腟鏡、Metricheck、用手法)を用いて診断精度を評価した結果、尿腟とPVDの検出率は用手法が最も高く、感度および特異度は他の方法と同等でした。特に用手法で診断された尿腟は妊娠率の低下と関連し、診断モデルの予測精度も他の方法より優れていました。この結果は、尿腟およびPVDの迅速な診断と管理が乳牛の繁殖成績向上に寄与することを示唆しています。用手法は特別な機器を必要とせず、実用的であるため、人工授精の前に有効な検査手段として推奨されます。
Changes in the C-reactive protein and 13,14-dihydro-15-keto-prostaglandin F2α concentrations of uterine lavage samples after the administration of povidone-iodine in cows.
Ando Y, Ishiyama D, Shimizu H, Endo N, Tanaka T.
J Vet Med Sci (2022) 84(10):1373-1376.
乳牛における子宮炎症の指標として、子宮洗浄液中のC反応性タンパク質(CRP)とプロスタグランジンF2α代謝物(PGFM)の濃度を比較しました。ヨード液を注入した牛では、非処置牛と比べてCRP濃度が有意に上昇しましたが、PGFM濃度には差がありませんでした。CRP濃度は局所的な炎症の有用なバイオマーカーとして注目され、特に急性子宮炎症の評価に役立つ可能性が示唆されています。一方で、PGFMは子宮修復過程で生成されるため、急性炎症の指標としてはCRPに劣ることが明らかになりました。
Congenital syringohydromyelia in a crossbred (Holstein-Friesian × Japanese Black) beef calf.
Ishiyama D, Yamamoto K, Kikuchi M, Magata F, Takahashi K, Chambers JK, Uchida K, Fujiwara R, Mochizuki M, Inokuma H.
J Vet Med Sci (2022) 84(1):31-35.
ホルスタイン種と黒毛和種の交雑種子牛で認められた先天性脊髄奇形である水脊髄症について報告しました。この疾病は脊髄内に多量の液体が貯留するもので、病理学的検査で確認されました。この子牛は、両側後肢の協調的なうさぎ跳び型跛行を示しました。CTおよびMRI検査により、第3-4椎間の脊髄での液体貯留が確認されました。この症例は、ホルスタイン種と黒毛和種の交雑種で報告された初の水脊髄症であり、CT検査による診断の有用性を示しました。
Perinatal rib fractures in 18 calves delivered from Holstein dams.
Ishiyama D, Makino E, Nakamura Y, Uchida M, Shimizu H, Ono M, Horikita T.
Vet Anim Sci (2020) 10:100134.
ホルスタイン種の母牛から生まれた子牛18頭における周産期の肋骨骨折について調査しました。163頭の子牛のうち、11%が肋骨骨折を起こしており、特に第2~7肋骨が折れやすいことが分かりました。骨折した子牛は呼吸困難や肺炎を起こしやすく、市場価格も平均より低下していました。子牛の肋骨骨折は呼吸器疾患と経済的損失をもたらすことから、難産リスクを減らし子牛の肋骨骨折を予防することが重要であると結論付けています。
Characterization of Bovine papillomavirus 28 (BPV28) and a novel genotype BPV29 associated with vulval papillomas in cattle.
Yamashita-Kawanishi N, Ito S, Ishiyama D, Chambers JK, Uchida K, Kasuya F, Haga T.
Vet Microbiol (2020) 250:108879.
ホルスタイン種の乳牛の外陰部乳頭腫から2種類のウシ乳頭腫ウイルス(BPV)を同定しました。一つは既知のBPV28で、もう一つは新規の遺伝型BPV29です。BPV28の一部にはL1遺伝子のフレームシフト変異が見られました。これにより、ウイルスの病原性や形態に変化が生じる可能性が示唆されています。BPV29はBPV6に最も近縁で、新しいXipapillomavirus 1種に分類されました。両ウイルスともにE1、E2、E10遺伝子のmRNA発現が確認されましたが、ウイルス粒子形成を示すL1の発現は認められませんでした。この研究は、家畜における乳頭腫ウイルスの多様性や進化について新たな知見を提供しています。
Clinical and postmortem findings of pentalogy of Fallot in an 18-month-old Holstein heifer.
Ishiyama D, Makino E, Nakamura Y, Uchida M, Onodera Y, Chambers JK, Uchida K, Matsuda F.
J Vet Med Sci (2019) 81(11):1676-1679.
18カ月齢のホルスタイン種雌牛で発見されたファロー五徴症(POF)について報告しています。POFは、右心室流出路の閉塞、心室中隔欠損、大動脈の騎乗、右心室肥大、心房中隔欠損が特徴で、まれな先天性心疾患です。本症例は、発育不良と食欲不振が認められ、最終的に死亡しました。解剖の結果、POFに加え、肺動脈の拡張が見られました。ホルスタイン種で報告されたPOFの中で長期生存した例であり、初期の肺動脈閉塞が遅れたことがその理由と考えられます。
Identification of bovine papillomavirus type 1 and 2 from bovine anogenital fibropapillomas.
Yamashita-Kawanishi N, Tsuzuki M, Wei Z, Kok MK, Ishiyama D, Chambers JK, Uchida K, Dong J, Shimakura H, Haga T.
J Vet Med Sci (2019) 81(7):1000-1005.
ホルスタイン種の乳牛から採取された肛門および外陰部の線維性乳頭腫について、病理学的およびウイルス学的に分析しました。PCRとシーケンシングにより、肛門部ではウシ乳頭腫ウイルス(BPV)タイプ1、外陰部ではBPVタイプ2が検出されました。さらに、BPV遺伝子のE2、E5、E6領域のmRNAが全ての症例で確認されましたが、完全なウイルス粒子生成を示すL1領域は検出されませんでした。この研究は、BPVがウシの肛門および外陰部腫瘍の発生に関与している可能性を示し、今後の感染予防策や病理学的研究に役立つ知見を提供します。
Severe incomplete fusion of the Müllerian ducts influences reproduction in Holstein cattle.
Ishiyama D, Nakamura Y, Tanaka T, Magata F, Matsuda F, Maeda KI.
Theriogenology (2019) 123:209-215.
ホルスタイン種乳牛におけるミュラー管融合不全が繁殖性に与える影響を調査しました。関東地方の1054頭の牛のうち2.09%にこの先天的奇形が確認され、そのうち22.7%は重度のタイプでした。重度のミュラー管融合不全は妊娠率低下や交配回数の増加に関連し、多変量解析でも正常牛と比較して約4倍も妊娠しにくいことを明らかにしました。重度のミュラー管融合不全を持つ牛は繁殖に供試しないことを推奨しています。
Factors affecting the incidence and outcome of Trueperella pyogenes mastitis in cows.
Ishiyama D, Mizomoto T, Ueda C, Takagi N, Shimizu N, Matsuura Y, Makuuchi Y, Watanabe A, Shinozuka Y, Kawai K.
J Vet Med Sci (2017) 79(3):626-631.
ホルスタイン種乳牛におけるTrueperella pyogenes乳房炎の発生要因と予後に影響を与える主な要因を調査しました。調査の結果、症状の重症度が高い牛は廃用される確率が高く、軽度から中等度の症状の場合に比べて乳房の治癒が難しいことが分かりました。また、乳房の損傷を反映するNAGase活性が高い場合、牛の廃用リスクが増加することも示唆されました。これらの結果から、感染の初期段階での早期発見と適切な管理が重要であることを示しました。